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コラム

36. 種を蒔く春

2015.06.09

季節は、3月中旬となり増々暖かな日和が多くなってきました。
一日毎に気温が上昇するに連れて、木々のつぼみが、少しずつ芽吹くのを眺めていると成長する姿を確認する楽しみを味わうことができます。

春は、草花が、暖かい陽光を得て上へ上へとスクスク伸びゆく季節です。
春を英語で言えば、Spring スプリング。

スプリングとは、単純には、「バネ」ですがその中に、飛び跳ねる、とか、原動力、あるいは、飛躍、などの上昇への意味が込められており私たちの心と体に元気と活力を与えてくれる言葉です。

春は、私たち日常にとって、春夏秋冬が、また巡ってきた一季節ではあってもそこに内包されている飛び跳ねる原動力をさらなる飛躍へと継げる元気と活力にしたいものです。

ところで・・・
私たちは、毎年春になるとさらに上へと上昇するために「自身への種を蒔いている」でしょうか?

年齢を重ねれば重ねるほどに、身体ばかりではなく心も萎えていくほどに
昨年より今年が・・・、今年より来年が・・・
さらに向上するなどとはとても困難と思われることでしょう。

でも本当にそうでしょうか。
そして、実際にそれでいいのでしょうか。

脳の画像を何千、何万と多数例を診ている私にとって脳の断面の形態そのものは、その人がその年齢までに培って来た集積であると理解しながら必ずしも「脳の形態」と「脳の活動」が、正比例しないことに気付きます。

例えば・・・
年齢は、とても若く、まさしく弾けるような肉体をしてさらに頭の中もギッシリと中味が詰まった栗の実のようでも活動は、なんだか冴えない人がいます。クスんでショボショボしている人がいます。

一方では・・・
年齢は、高齢者で、まさしく朽ち落ちるような肉体をしてさらに頭の中も振ればコロコロと音がする鈴の中にある銅珠のようでも活動は、人々を魅了する人がいます。オーラを出してキラキラしてる人がいます。

この差は、いったい何なのでしょうか。
ショボショボと・・・キラキラの・・・違いは何?

歳を取るにつけて加齢現象にともなう脳の変化が、出て来ることはやむを得ないことです。
だから脳に異常があるか否かを判断する時には、あくまで年齢との相対比較。
厳密な判断基準などはないものの年齢と形態を相対的に評価することによって「この脳ミソ・・・問題あり」となります。

しかし、ここで言いたいことは、形態によって活動が規定されるのではないということ。
あの有名な物理学者、アインシュタイン博士は、素晴らしい頭脳を持っていながら脳そのものは、ガサガサしていたそうです。

そんな博士が、記念写真を撮る時に「笑って下さい」とのリクエストに応えてカメラの前で大きく目を見開いて舌を出した光景は長年培われた即座に対応できるお茶目なユーモアセンスの故なのでしょう。

アインシュタイン博士が、晩年まで興味が尽きなかった壮大な宇宙に関する「数学的自身への種蒔き」と「社会的他者への種蒔き」を絶やすことなく過ごしたことが、輝く源になったものと思います。

頭を振れば、鈴のようにチ~ンと音がしそうな脳・・・
頭を叩けば、銅のようにゴ~ンと音がしそうな脳・・・
そんな頭であっても人を魅了するセンスを持ち合せた老人は、素敵でカッコイイと思います。

春には、竹が節を付けながらスクスク成長していくように人も節目をしっかり付けることで次なる成長に進むことができる。

そこで節目となるこの春は・・・
歳が、いくつになっていてもスプリングという躍動ある節目の言葉を肥料として秋に収穫できる「新しい自分への種をまず一つ蒔いて」おきたいものですね。

そして、さらには・・・
自分のためだけに種を蒔くのではなく20年後に「人や社会に花が咲く種をもう一つ蒔く」よう心掛けたいものですね。

私たちは、幼き子であってもいずれは必ず訪れる老齢期に素敵てカッコイイ老人を目指して幼き頃から老後の準備を始めましょ・・・。