44. 「衣替え」と「心替え」の6月
2015.06.09
6月は、春から夏への衣替えの季節ですがこの頃は、雨や曇りが多くて、晴やかな気分になれない日々が、続いていますね。
さらに、梅雨の時期になると、一層うつ的な気分が、心を支配してしまいます。
こんな時は、いったいどのように対処したらいいのでしょうか?
私は、一介の脳外科医の端くれですので心の病や精神の病気の治療に関しては、素人同然です。
私のような路端にいる old fashion-neurosurgeon (古風な脳外科医)は日常の診療の中では、古典的な診療を日々の仕事にしています。
訴えを聞き、その訴えの中にある、病の本質が、どこにあるのか、を推定し、検証する。
推定が、当ることもあれば、ハズレることもある。
過去を振り返ってみれば、推定がハズレている場合が、ほとんど・・・
のような気がします。トホホ。
でも、それはそれでよし。
何故ならば、邪悪な予感が、ハズレた方が、患者さんには、幸運だから。
「病の本質が、脳腫瘍に原因があるのではないか、と推定して
画像で検証してみたら、いやはや、ハズレでしたあ~」
これは、推定した人(医者)は、トホホですが、検証された人(患者)は、ワハハです。
日々、来院される多くの患者さんの治療では、現代という時が生む病をも同時に対応していかねばなない時があります。
それは、ストレスによる、リストラによる、今という時代が生むこころの病。
かつて、会期中に突然辞任した首相も、祖国で療養中にサッカーに興じた横綱も権力構造のトップや強靭と思われた人が見せた、思いがけない脆さや、釈然としない振る舞いは今日的な象徴でした。
私たちの中にも、しっかりと仕事をして、地道な家庭生活を営んでいる人が思わぬメンタルクライシス(=精神的危機)に陥ることもある。
日常の中に精神のピットホール(=落とし穴)が、誰しもいくつも隠れている。
それが、今そのものの、逃れようのない、現代であると思います。
でも、潜んでいる、そんな不測の事態に、全て備えることはできません。
しかし、修羅場の耐性力がない人と思考の柔軟性がない人が少なくとも、心の危機と、肉体の崩壊に陥らないためにもっと「成熟した大人の精神」を自身の中で育てていこうじゃないか、と。
かくいう私が、「成熟した大人の精神」を身に付けているわけでは、決してないのですが。
では、「成熟した大人の精神」とは、いったい何でしょうか?・・・
専門家ではない、どこにでもいる路端の old fashion-neurosurgeon が知ったかぶりで、偉そうに言うつもりはないのですがかつて学んだ精神医学の大家フロイトの一言を思い出すと「成熟した大人の精神とは、セルフコントロールの力を磨くことだ」と。
実は・・・
アスリートが、自己の肉体を鍛錬することも肥満者が、メタボにならないように食欲を抑えることも受験生が、誘惑に負けないように勉強に励むことも全てセルフコントロール、自己管理力だと言えそうです。
自己の心と肉体を、如何に上手にコントロールするかその力を磨くことができれば、社会的な耐性が培われ小さな物事に恐れず、何事にも臆しない力がつく。
「そんなことを言われなくても、分かっているよ・・・」
「それが、できないからこそ、困っているんだよ・・・」
と言われそうです。
そこで、自身の自己管理術はどうしていますか、と問われれば・・・
最低限のセルフコントロールとして、心掛けているのは日常で、“いつも心身を上機嫌モードにすること” である。
逆に言うと、“不機嫌さを冗長させないこと” だと。
不愉快な経験をした時、その不快な気分が、いつまでも心の中に居座っている状態とはあたかも手狭なマンションにあるタンスの中に、不要な洋服を買って、しまって置くようなもの。
そんな要らぬモノと同居しても、仕方ありません。
自分にとっても、周りの人にとっても、邪魔になって生産的ではありません。
不要な洋服は、消却処分しないまでも、不要品としてタンスの中に整理して閉まっておくことに限ります。
不快な感情は、ストレスとなって、心は晴れず、体も重く、ただただ疲れるだけ。
心が、整理されれば、そこには別ものが入るスペースができる。
そして、新しい愉快が、入り込んでくる余裕が生まれる。
そんな最低限度の心身を上機嫌にするセルフコントロールが自己管理の第一歩だと思います。
かつての old fashion に慣れ親しんだ私たちが、今風の modern smart を目指して現代のこころの病に陥らないために『いつでも、どこでも、上機嫌な、私作り』は自己に対しても、他者に対しても、至上の日常生活作法とされるべきでしょう。
下手な占い師を信じるより、やましい霊感師のお告げよりそして、究極は、馬鹿な医師に診てもらうよりまずは、自らの上機嫌力を身に付けることの方が、必要な健康法だと思います。
さあ・・・
「衣替えの6月」は現代という時が生む病にも、整理ダンスを上手に利用して「心替えの6月」として日々を過ごしていきましょうね。
2009.6.7