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コラム

39. 平和と敬意が調和した日

2015.06.09

4月10日は、日本列島が、暖かいほのぼのとした穏やかになれた日でした。
桜前線が、日本を南から北へと北上し、各地で桜が満開になったからだけではありません。
この日は、日本の象徴としての天皇皇后両陛下がご結婚され50年を経て金婚式を迎えられた日でした。

両陛下は、50年間の軌跡を振り返って皇居宮殿でのご会見で時折お互いを慈しむように見つめ合い、さらにお互いに感謝の気持ちを伝え合うように小さくお辞儀を繰り返されていました。

25年前の銀婚式では、天皇陛下は「努力賞」、皇后陛下は「感謝状」というお言葉をお互いに対して述べておられます。

この度の金婚式では、「結婚50年を本当に感謝の気持ちで迎えています」と述べられた際に時折声を詰まらせ涙ぐむような表情を浮かべるお姿に胸が熱くなった人も多かったのではないかと思います。

そんな報道を新聞やテレビ、雑誌などで拝見した時天皇家が、この日本に存続していて本当に良かったと思いました。
そして、両陛下のお二人が、お互いを慈しみ合うそんなお姿の会見に素直に暖かいほのぼのとした気持ちになれたのは、私だけではなかったと思います。

浅学な私は、天皇家の歴史や人間として存在、あるいは政治的な意義がどうなのかなどの難しい問題は全く熟知していません。

私が、知っている知識は・・・
今上天皇と称される現天皇が、昭和34年、西暦で言えば1959年の4月10日にご結婚され1989年1月に第125代天皇として陛下が即位されたこと。

そして他国の多くの皇帝が、権力闘争の殺戮の中で子孫を殺したり殺されたりしながら為政者として権力の最頂点に立っていたのに反して日本の天皇家の史跡は、“和をもって尊しとなす”を旨として権力を求めず穏やかな歴史を歩んで来られたこと。
・・・そんな簡単な知識しかありません。

 “和”とは、英語で表現すると Respectable with peace (平和と敬意)
 一言で言えば、 Harmony (調和)でしょうか。

永きに渡って権力の交替があっても天皇の権威が奪われなかったのは権力を求めず、常に権力よりも崇高な立場に立って権威を和をもって最上の価値として連綿と継承されて来られたからなのでしょう。

穏やかな一家族であられるそんな天皇家が、この日本の長い歴史上の変遷の中でも潰れず象徴として存在しておられることは、今、不安定社会にいる私たちにとって本当に有り難いことだと思う。

そしてそのことは、日本の誇りであり私たち精神のファンダメンタルな支柱であるとも思います。

もし皇室という家系が、今の日本に存続していなかったら日本の社会は、バラバラになっているのではないか、と思うのは私だけではないでしょう。

ところで・・・
為政者にとって権力を求める意志とは何でしょうか?
為政者が、自分ならばその権力をもって他の誰よりも適切に行使することができるという展望と裏付けを私たちに提示してくれなければ、為政者の意志に意味がないと思います。

一方で・・・
権力を求めない天皇家は、日本がどのような危機に際しても権力では替えられない不動の権威によって、私たちの底力を陰で支えてくれている。
そこには、皇室に対する長い年月をかけて培われた私たちの自然な敬意が基礎にあるからこそ意味があるのだと思います。

桜前線が、日本列島を北上し、世は春爛漫。
人々は、閉塞の憂さ晴らしにあちらこちらでお花見に繰り出してその宴もそろそろ終ろうとしています。

年に一度咲き誇り、あっという間に散っていく桜も十分味あわず今年も過ごしてしまった口惜しさの中で暖かなほのぼのした穏やかな気持ちになれた4月10日は地域の桜が一層華を添えて、平和と敬意が調和した日でもありました。