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コラム

67. 侮れない「気」の薬効

2015.06.10

残暑が、例年以上に厳しい今年の夏でした。
9月下旬になっても、真夏のような暑さ。
こんな酷暑の夏に、外で働く人たちは、本当にお疲れさまです。

ビルの中で働いていると、外の気候の変化に気付きにくいのですがさすがに今年は、この直射日光を窓越しに当たると診察室も異様な気温上昇でした。

当院はビルの二階にあり、二階の壁面が全面ガラス張りとなっています。
その窓側が、診察室ですので、午後からは光量がさらに増すと室内の温度が上昇します。

診察室から外の様子を眺めると、ビルの隣りが、小さな川になっています。
その小川と交差する、あざみ野駅へと通じる生活道路には行き交う多くの人々の姿や車の流れが、見られます。

診察室の大きな窓から、青空と雲行き、街路樹の木々のなびき、路面の湿潤そして、人や車の流れを観察することで、外の空気を感じることができます。
それは、あたかも診察室で、風景画をボ-ッと眺めるような、一服の清涼剤でもある。

私は、ビルの中で多くの患者さんを日々診察しながらその合間に、大きな窓から外を眺め、刻々と流れる景色や事物をありのまま写し取る窓枠の風景画によって「外の気」を感じ、「内なる気」を和ましているのでした。

ところで・・・
当院のようなチッポケな診療所にも、多くの製薬会社の営業の方々が、日々お見えになります。
この夏は、こんな暑い中を仕事とはいえ、ご苦労さまと申し上げたい気持ちでした。

午前の診療が、終った昼休み頃、あるいは午後の診療が終了した頃にお見えになり、談笑をしながら、種々の情報を届けてくれます。
最新の薬の情報は、もちろん、既存の薬の副作用情報、学会の情報など多岐に渡ります。

営業の方々の情報の中で、薬の効能や効果、使い方、あるいは適応疾患はもっとも重要な内容です。最近は、ジェネリックと言われる値段の安い薬も出ています。
巷に溢れている多くの薬剤の効能効果と副作用、そして適応疾患などの情報の伝達。

製薬会社の営業の方々のそんな地道な影の努力によっても医療が、支えられていると考えると営業の方々の訪問は、大変有り難く、ぞんざいにする気にはなれません。

そんな薬の情報を踏まえながら、来院される患者さんには新しい薬を勉強し処方する前に、あるいは既存の薬を処方する前に私が、処方するとっても安くて大切な「クスリ」があるのです。

それは、一体どんな薬なのか? 新薬ですか? 特効薬ですか? 秘薬ですか?いったいなんなの? そのクスリとは・・・。
それは、紛れもない「気」というクスリなのでした。

なんだそりゃ・・・とお思いの方も多いことでしょう。
当院では、患者さんが、来院されると、まず看護師が、十分な問診を聴取します。
「いつ、どこに、どれくらいの時間、どの程度、どんな風に、症状が起こったのか」

次に、医師が、その問診を元に根掘り葉掘り、症状を確認します。
必要な場合は、さらに高性能な MRI を撮像することによって症状に起因する病変が、頭にあるのか、ないのかを確認します。

年齢を重ねることによって起こる脳の変化は、多少あったにしてもそれは加齢現象の範囲内であれば、頭には、大きな問題はない、と診断します。
加齢による許容できる範囲の所見はあっても、現時点では、異常はない。

「頭痛やめまい、あるいはしびれという症状 ≠ 脳に原因」をまず最初に高性能 MRI で証明できれば大変大きな安心の材料となります。

でも、 MRI で全ての病変や変化を捉えられるわけではない。
私たち専門家は、画像が主体ではなく、あくまで症状が主体であると常に念頭に入れて置かなければならないのは、言うまでもありません。

脳に器質的原因はないと説明したあと、約1ヵ月後に再来された患者さんを診てみると半数以上が、症状が改善か、あるいは消失しています。
念のために出した少量の頓服薬のみか、薬を処方しなくてもです。

私は、このクスリを密かに「気の処方」と呼んで最も重要視している処方箋なのでした。

気とは何か・・・
天地間を満たし、宇宙を構成する基本と考えられる動きのこと。

自らの力で、病を改善したり消失したりする「自浄の気」。
私たちは、自ら持っている「気」の薬効を侮らない方が、いいのではないでしょうか。

最後に、今日は、9月26日。
ロシアの生理学者、イワン・パヴロフは、今日が生誕日です。
氏は、犬の消化腺の条件反射を発見して、1904年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

生命に潜む条件反射の発見は、人類にとって重大な意義を持つと賞賛されました。
侮れない「気の薬効」によって、私たちは、どのような条件に反射して心身の健康を維持するか、を愚考した9月26日でした。

2010.9.26