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コラム

69. 文化の日と勤労感謝の日

2015.06.10

秋も深まる11月は、国民の祝日が、二日ありました。
3日の「文化の日」と23日の「勤労感謝の日」です。
ひと月に二日も祝日があると、多忙な日々を過す人にとって、体が休まり、有り難いことでした。
そこで心身の休養になる国民の祝日に、「文化」と「勤労」について考えてみました。

国民の祝日である「文化の日」は、祝日法では自由と平和を愛し、文化をすすめることを趣旨とする、となっています。
それで、その「文化」とは、いったい何でしょうか?というわけです。

文化のつく名前は、いっぱいあります。
新聞紙面には、文化欄に日本文化、文化交流などの言葉が、いつも掲載されています。
学校や芸術では、文化祭や文化財、市町村には、文化会館や文化センターがあります。

そして、もう過去の言葉として、秀でた才能を持った人を文化人と呼び文化都市の文化住宅では、文化鍋と文化包丁を使っていました。

ということは、小説や音楽、映画や演劇、つまり芸術や娯楽は、もちろん日常の生活品、暮らし方に至まで、文化という言葉が、使われているようです。

すなわち、文化とは・・・
私たちが、今自分たちが属している社会の遠い祖先から、後天的に受け継いだものであり更にその社会を通して、遠い子孫に伝えていくもの。
いわば、社会的遺伝子を担った有形無形の継承だと言えます。

では、日本に住む日本人にとって、日本の文化の良い点とは、いったい何でしょうか?
茶道や華道、囲碁や将棋、三味線や和太鼓、大相撲や歌舞伎、寺院や仏閣などは日本独自の優れたものとして誇りとされています。

でも、優れているのは、それぞれが、独自の文化を築くその過程で私たちの祖先が、外の異文化の良い点を、謙虚に取り入れて来た。

工夫改良しながら、自分たちの暮らしに合うように、磨き上げその発展に、真摯な努力を積み重ねて来た。
その点にこそ、日本の文化の優越性があると、言えるのではないでしょうか。

異文化に学ぶ謙虚さと、ひた向きな向上心によってオリジナリティーある個性を、開花させたこと。
これこそが、日本人が、誇り得るアイデンティティの根幹だと思います。

日本人が、異文化に拒絶反応を示さなかった理由は山、川、海の大自然の摂理を至高とする、移ろいゆく四季の自然に対する崇拝心がすべてを受け入れる寛容の精神を培ったと言われています。
そんな日本に生まれ住んだことに、改めて誇りに思います。

社会における文化の成熟過程は、個人における人格の形成過程についても同じことが言えるかもしれません。

自分の姿形や精神を形成してくれた過去の文化の価値を認めその基礎を十分理解、習得し、固めた上で他者の長所を謙虚に学び、柔軟に取り入れることで、自身の個性を磨いていく。

それが、優れた自分の文化(個性)を創造し、自己を成長させるのだろうと思います。
だから、個性は、初めからあるのではないのです。

文化は、英語では、culture と書きますが動詞では、「耕作する」という意味ですし、名詞では「文明、教養」という意味です。

文化とは、端的に言うと・・・
社会においては、「耕作された文明」であるし人間においては、「耕作された教養」ということになるのでしょう。

さて、文化の次に、勤労とは、いったい何だろうか、と考えてみました。
「勤労感謝の日」は、祝日法では勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合うことを趣旨とする、となっています。

戦前の11月23日は、日々の労働に対して、農作物の恵みを感じる新嘗祭でした。
そんな感謝の日だったことを、私たちは、まったく意識しないまま心身を休める一日、ラッキーな一日と思って、過した方も多かったことでしょう。

毎日が、祝日と休日の入れ替わりで、しかも給料が自動振り込みだったらこんな嬉しく楽しい日々はないだろう、と思っている方もいるかもしれません。
実は、とっても怠惰な私も、心の底では、そんな生活を夢見ているのですが。

休日のラッキーな一日に、そもそも私たちにとって仕事(働き)とは、何だろうかと怠け者の私が、殊勝にも、ちょっとまじめに考えてみると

まず労働とは、英語で labour と書きます。動詞では「骨折る」という意味がありますし、名詞では「陣痛」という意味もあります。
その心は、産みの苦しみの中で精進する痛みのこと。

私たちは、産みの苦しみの中で、根気よく精を出す仕事によって救われまたその仕事によって磨かれる、ことが多いと思います。

とすると
苦しい時、哀しい時こそ、与えられる仕事が、むしろあった方がいい
楽しい時、嬉しい時こそ、求められる仕事が、さらにあった方がいい
と気付かされます。

だって
人は、仕事によって、癒され救われ人は、仕事によって、触発され磨かれるのですから。

仕事(働き)とは、何か・・・
労働こそが、どん底の人からてっぺんの人まで、一人の人間を真っ当にする他の動物にはない、人間のみに遺伝的に仕組まれた教育装置なのでしょう。

私たちは、食べることだけを目的として、働いているわけではありません。
より善く生きて、その結果、少しでも人や社会に役に立ちたいと思って大勢の人が働いています。
でも仕事は、外で働くことだけが、仕事ではない。

日常の洗濯や炊事も、家族の役に立つりっぱな仕事。
労働は、より多くの他者の仕合わせに通じるからこそ、家事であってもその仕事に打ち込む時人の心は、豊かに満たされるのだと思います。

勤労とは、端的に言うと・・・
人間が、幸福な家庭を営むための第一要諦であり社会が、永続的に発展するための基本要件なのでしょう。

最近、某国の法務大臣が、その耕された教養で「二つの言葉を覚えていればいい」という迷言を吐きながら「今後とも真摯に国会答弁を行ない、職務に精励し頑張っていきたい」という日本人の美徳といえる勤勉さを示しつつ、辞任されました。

折しも11月の休日、私が文化と勤労について、考えていた時「耕された教養」と「日本人の勤勉さ」の的外れに体が、凍てついたのは、私だけではなかったことでしょう。

ただし、もう一つの視点は、法務を司る最高権者としては、疑問符が付いても別の職域では、その「教養と勤勉さ」を十分発揮される仕事はあるだろうと。
一局面だけを見て、断罪される人は、酷であるし、断罪する人は、不遜だと思います。

先日、APEC が、横浜で開催された際は隣国のお偉い首相が、ニコリともしないで「文化の違い」を見せてくれました。
以下( )は、著者のつぶやき。

 (コキンちゃん!
  あんたねえ、その仮面様顔貌・・・
  そんなしかめっ面で握手していたら
  肩凝り頭痛になりまっせえ)

大国の大統領が、鎌倉大仏見学のヘリコプター飛来で「貧富の違い」を見せてくれました。

 (オバマはん!
  あんたねえ、その抹茶ソフトクリーム・・・
  美味そうに食べてたねえ
  横浜鎌倉の寒空で、冷たいモン食べていたら、腹壊しまっせえ)

極北の大統領が、極東の小さな島へ遠路ご出張で「勤労の違い」を見せてくれました。

 (メドベやん!
  あんたねえ、その薄着の訪問・・・
  ご多忙の中を、そんな極東のウチン家に、わざわざ勤勉にも、来なくてええよ
  寒くて、風邪引きまっせえ)

現今の日本が、日本人としてのアイデンティティの育成を目指すなら日本の DNA により形成され、培われた文化を大切にしつつ異文化に学ぶ謙虚さと向上心で、勤勉に働く以外に道はない。

しかも・・・
異国の文化の違いには、相当大きなギャップがあることを十分承知し、理解しながら・・・。「文化と勤労」に感謝しつつ、思いを廻らした11月でした。

2010.11.28