25. 新しき 年
『新しき 年の初めの初春の 今日(けふ)降る雪の いやしけ吉事(よごと)』
万葉歌人の大友家持が、1250年前のお正月の宴で詠んだ歌だそうです。
この歌を今朝読んだある新聞で知りました。
この歌が、約4500首を収めた万葉集の掉尾(とうび)を飾る歌であり家持が、この世に残した最後の歌であったことが、また私たちの胸を打ちます。
しかもこの歌が詠まれたのは、1250年前・・・天平時代です。
いったいどんな時代だったのでしょうか。
その頃、新年に降る雪は、吉兆とされていたそうです。
新しい年が改まって、よいことが起る徴(しるし)として新年に降る雪を歓迎したその心は今の時代にも通じるものがあります。
「いやしけ」とは、ますます重なるという意味。
当時、家持は、左遷人事の中を失意の胸中にあったらしい。
そして、新年を迎えたお正月の宴で初春に積もる雪のように「吉き事」が重なってほしいと願う。
そう詠んだ歌が、万葉集の掉尾の歌で、しかも家持の最期の歌になろうとは。
私たちは、言霊(ことだま)によってすなわち言葉に宿っている不思議な力によって励まされることが多いと思う。
冒頭の歌で失意の中、自らを鼓舞した家持は1250年を経て昨年少し(実はかなり)へこたれていた私へも励ましのメッセージを送ってくれたのかもしれない。
そう思うと、自分自身が「世ごと」「人ごと」への感性を磨きながら「新しき年」を「いやしけ吉事(よごと)」にしたいと切に願う元旦でした。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
2009.1.1